全力で駆け抜けた日々を振り返って
17歳のときスカウトされ、モデル事務所に入りました。将来を決めかねていましたし、母親の勧めもありアルバイト感覚で始めたのですが、すぐに雑誌の専属モデルに決まって。どんなポーズを取り、いつ瞬きするのかも分からないまま、とにかく周りの人に迷惑をかけないように必死で学びながら経験を積みました。モデルは、常に「自分」と向き合う仕事です。10代でファッション雑誌の専属モデルとなり、結婚して子どもが産まれてからは主婦向けの雑誌でママモデルを、最近は、子どもが大きくなったことで再びひとりの女性としての生き方を誌面で演じています。モデルの表現を通して、それぞれのライフステージで自分が何を考え、どう年を重ねてきたのかが表情やポージングに表れると思うので、面白い反面、怖いときもあります。そんな風に色々な葛藤もありながらモデルとして全力で走り続けてきて、プライベートでは子育てが落ち着いたこともあり、いまやっと自分を見つめ直す時期にきているのかなと思っています。
「母親」にも、ときどき休息を
結婚は、23歳のときでした。今考えると未熟でしたが、早くから仕事を始めたせいか当時は自分を大人だと思っていたところがありましたね。結婚して家族ができ、家事をするのは当然のことだと思っていました。ただ、母親になることがこれほど大変だとは、なってみるまで分かりませんでした。家のことはすべて自分がやらなければ、他に誰もやってくれる人はいませんので、「自分の代わりはいない」という責任の重さを実感しました。特に下の子どもが生まれてからは、起きてから寝るまでずっと“自分以外の誰かのために動いている”状態で、ときどき息苦しくなることもありました。そんなストレスの解消法は、朝でも夜でもどこかのタイミングで、“自分のための時間”を作ることです。一日30分でもいいから、子どもを寝かしつけたあとに読みたい本を読んだり、ただリラックスしたり。そんな時に、アロマを焚くことも多かったです。
不安で固く閉じた心を、
香りが開いてくれた
37歳くらいのとき、精神的にすごく落ち込んだ時期があったんです。特に理由があった訳ではないのですが、子育てが一段落したときに急に時間ができて、自分が何をしたらいいのか分からなくなってしまって。そんなとき、友人にローズ精油の講習会に誘われたんです。もともと香りのある生活が好きで、アロマも楽しんでいましたので、気分転換に参加しました。そこで、香りのさまざまな作用や、心地よいと感じる香りには理由があるということなどを知って、「こんな世界があったんだ」と新鮮な刺激を受けて。香りについてもっと知りたいと思いました。資格の勉強を始めてからは、漠然と抱えていた不安が少しづつ消えて、どんどん外に目が向くようになったんです。「何をやっていいのか分からない」と固く閉じた心を香りが開いてくれ、学べば学ぶほどワクワクすることへと導いてくれました。そのうちに、「香りを使って美容に関わることを何か始めてみたい」という気持ちになれたのです。
事業を通じて、
社会にも貢献していきたい
私にとって、一番リラックスできるのがバスタイムです。そこでお風呂で使えるアイテムを、大好きな香りで作って販売する会社を立ち上げようと思い立ちました。女性にも男性にも使ってもらえるように、ポジティブで中性的なオレンジの香りをシグネチャーに、シャンプーの開発に着手しました。香りの出方やテクスチャーにもこだわり、生産工場とは1年半以上もの時間をかけサンプルのやりとりを行いましたが、アロマテラピーアドバイザーの資格を持っていたことで、自分のイメージも具体的に伝えることができ、また、原料メーカーの方からも信頼いただけました。もっとアロマの知識を深めるために、新たな資格の取得にもチャレンジしてみたいと思っています。これまでは、子どもの学校などを通じて地域とつながり、ボランティアなどを行ってきましたが、会社を立ち上げたいま、今度は商品を通じて何か社会に貢献できればと考えています。例えば、被災地などにシャンプーを届けたり……私が香りでポジティブな気持ちになれたように、今度は香りで人を幸せにすることができたらいいですね。