茶道の精神を具現化してくれたのが
アロマテラピーでした
私は15才から茶道を続けてきましたが、お茶の世界で学んだ精神を生活の中にぐっと引き入れてくれたのがアロマテラピーでした。茶道の心得に「和敬清寂」という言葉がありますが、「和」の心で互いの存在を認め、「敬い合う」ことで清らかで心穏やかな状態に至ることを表します。お茶と向き合う時は常に心がけようと努めていましたが、アロマテラピーを始めてからは、意識しなくても自然とそのような心持ちになり、身体で実践できるようになったんです。茶道は、高鳴る精神を安定させ、人と人の心のふれあいを生み出します。その根底にあるのは「おもてなしの心」です。他人を招き入れ、目の前の相手が求めるものを差しだすという茶道で学んだ精神は、サロンをオープンする際の私の軸になりました。ひとりでも多くの人にアロマテラピーを通して心の静寂を身体で感じて欲しいと思っていますが、そこには茶道で培った精神が活かされていると考えています。
震災に突き動かされて
アロマテラピーを本格的にはじめようと思ったきっかけは3月11日の東日本大震災でした。実家が宮城県の石巻で、震災の時は私も石巻で働いていました。あの時は全員が被災していましたが、自分と周囲の人を比べてみて、不思議と自分は他の人より平静でいられることに気づいたんです。震災直後、眠れない時はお茶のお点前を頭の中でリピートしていました。すると気持ちが落ち着いて自然と眠れたので、茶道のおかげで気持ちを保っていられたのかもしれません。それから、自分にも何かできるのではないかと考えるようになりました。実は若い時に仕事で身体を壊して、アロマテラピーについて少し学んだことがありましたが、その時は何かをはじめるまでには結びつきませんでした。それが震災の後、引きこもったり心に傷を負った人たちと会って話を聞いたりしていると、やっぱり身体から健やかにならないといけないんだと気づいて、アロマテラピーのことを思い出したんです。それから本格的に勉強をはじめ、今はアロマセラピストとして東京と石巻の両方で活動しています。
本当に必要な人に、
アロマテラピーを届けるために
アロマテラピーでリラックスすると、今の自分や、自分の置かれた状況を素直に受け入れることが出来るようになります。今まで身体を覆っていた殻を破る感じですね。でも、そうやって自分の殻を破りたいと思っている人が、うまくアロマテラピーと出合ってくれるとは限りません。タイミングもあれば、ただ「知らない」ということもあります。一度アロマテラピーのよさを実感した人は、毎回サロンに来てくれたり、仲間の輪はどんどん強くなるのですが、その輪が強くなりすぎてもいけません。本当に必要な人が入って来られなくなってしまうので。
これからは、サロンを運営しながら私の方からも外に出て、歩み寄る活動を続けていかなければと感じています。茶道は、アロマテラピーの世界を広げるひとつの手段になると思っていますので、まずは茶道の仲間たちにアロマテラピーを知ってもらうことからはじめていきたいと考えています。