憩いと癒しの“花の島”淡路市
穏やかな瀬戸内海に面した淡路島の北部に位置する、兵庫県淡路市。
四季を通じて温暖な気候の淡路島では年間でさまざまな花が楽しめ、特に春はキンセンカやチューリッ「今年は、ハーブを通した魅力ある街づくりの推進を目的とした『全国ハーブサミット』の開催地にも選ばれ、香りを活用した地域活性化への本格的な取り組みが始まっています」と、淡路市役所商工観光課の南さん。
プ、菜の花が島のあちこちで咲き誇ります。
この機会に、多くの人に淡路を訪れてもらいたいと話します。
島と都市の魅力を「いいとこどり」!
淡路市は、明石海峡大橋を渡れば神戸市の中心地まで車で約35分というアクセスの良さから、神戸・大阪へ通勤する人も少なくないそう。そうした利便性を踏まえ、近隣の神戸市、芦屋市、洲本市と連携し、豊かな自然環境と都市機能の両方を享受できるライフスタイルで移住者を呼び込む施策も行っています。そのプロモーションのアイデアとなったのも、“香り”。
異国情緒あふれる神戸市に漂う「コーヒー」の香りや、地場産業となっている淡路市の「線香」の香りなど、それぞれの土地に根付く香りを採取し、成分分析して再現。東京で行ったプロモーションでは、その香りを、大胆な鼻のオブジェからディフューズする施策を行い、ユニークな取り組みとして大きな反響を呼びました。
“地域おこし協力隊”が掘り起こす、
島の魅力
香りを活用した地域活性化の取り組みには、島外から移住してきた方々も関わっています。4年半前にはじめて島を訪れた和泉さんは、香りのデザインやプロデュースも行うアーティスト。淡路島に伝わる香木伝説※1 をきっかけにお香に興味を持ち、通いはじめたのだとか。「淡路島の香りのルーツ。香りの創作活動としては最高の環境です」と、仕事の拠点を淡路島に移し、現在は地域おこし協力隊※2 としても淡路島ブランドのフレグランス開発や、販路の拡大に努めています。「ここでは良質なハーブがたくさん育ちます。しかし島民の人は意外とハーブを活用していなくて、庭に植えたハーブをお茶や料理に使ったりするのはむしろ移住者の方が多いと感じます。島の外を知っているからこそ、淡路島の恵まれた環境が目に留まるのかもしれません」。
そうした気づきを発信していくのも、“協力隊”の役割なのだと和泉さんは語ります。
※1 淡路島の香木伝説…「淡路島に漂着した木を焼くとよい香りがしたので香木として朝廷に献上すると、聖徳太子がその香木で観音像をつくった」と『日本書紀』に記されている。
※2 地域おこし協力隊…課題を抱える地方が地域外の人材を受け入れることで、地域活性化を図る、総務省による制度。
香りのルーツから、
新しいライフスタイルの提案
「およそ170年の歴史を有する淡路市の線香産業ですが、今や生活・文化の多様化で線香の需要が減少しています。また、就労者の高齢化や後継者不足の問題などもあり、産業の継続は深刻な状況です。このままでは、“地場産業”といえなくなるのではないかと危機感を持っています」。そう語るのは、兵庫県線香協同組合の新開(しんがい)さん。
しかし、仏事用とは一線を画した“空間芳香用”の線香開発で産業の活性化を図っています。煙で香りを楽しむお線香は“香り大国”フランスで受け入れられ、数年前から取引もはじまったとか。その他ヨーロッパやアジアの展示会にも積極的に参加し、空間芳香用のお線香をアピール。匠の技を打ち出した“JAPAN BRAND”の線香は海外の注目を集め、またそうした評判を国内PRにも活かすユニークなマーケティングを展開しています。商品を売るだけではなく、ワークショップなどを通じて香りのあるライフスタイルを広め、線香の新しい市場の形成にも努めているそうです。
“香り”でつながる淡路市の取り組み
「まずは淡路を知ってもらうこと。『○○の街ですね』というイメージをつくりたい」。
そう話すのは、淡路市まちづくり政策課の坂東さん。人口減少などの地方が抱える問題を、淡路市はどう克服していくかという難しい課題に日々向き合っています。
「5つの町が合併してできた淡路市は、町ごとに異なった歴史・文化を持っています。“香り”に関しては旧一宮町(線香の工房が集まる地域)のイメージが強いのですが、ハーブサミットの開催を契機に年間を通して楽しめる花の魅力はもちろん、土地に根付く自然の香りなども含めた“香り”の魅力を、市全体で発信しています」。
今後はそれぞれの活動が、さらにパワーアップしていくでしょう。
香りがゆっくりと大気に広がるように、淡路市の取り組みがだんだんと社会に浸透していくことを期待したいですね。